少し前に、ヴァイオリニストのギドン・クレーメルの特集番組「バック・トゥ・バッハ」(ドイツ制作)をテレビで興味深く観ました。
というものの、私はギドン・クレーメルの演奏があまり好きではありません。「観念が先行する(ゆえに時折感覚を逆なでする)演奏」に思えるのです。
しかし、番組を観ていて、彼の、自身に対する(修行僧のような)厳しさには頭が下がる思いがしましたし、彼の発する言葉にも含蓄がありました。
「仕事に身をささげている芸術家は多くの犠牲をしいられます。仕事に没頭することによって、人生の一定の時期や私生活の多くのことが、
犠牲になります。でも、自分の仕事は天職で、気楽な職業とは違うと思うなら、意味はあるでしょう。」
けれども、番組中で一番印象に残った言葉は、作曲家のグヴァイドリーナがバッハについて語った言葉でした。
「バッハは、音楽史の中心的な人物で、人間の大切なものを一つにまとめ上げました。
つまり、知性がなしうることと、本能的・直感的な力を結びつけたのです。」
この言葉を聞いて、「さすが!(言葉で説明できないと思っていた)バッハの音楽の魅力の秘密をよく掴んでいるなぁ」と思いました。
それから、この番組で引用されていたフランス映画、無伴奏「シャコンヌ」、ぜひ観てみたいので、DVDを発売して欲しいですね。